最近とある本を読みました。

出版当初から世間の評判はあまり良くなく、未だに賛否分かれる本です。

ただ頭ごなしよりも読んでから否定した方がいいかなと思って、書店で見つけた時は迷わず購入しました。

1997年に発生した「神戸連続児童殺傷事件」の元少年A(酒鬼薔薇 聖斗)が執筆した「絶歌」です。

© 週刊新潮 2018年12月27日号

内容としては2部構成になっておりまして、第1部は犯行に至った経緯や当時の思い・第2部は逮捕後の後悔の念や施設等で出会った人たちへの感謝の思いが綴られていました。

詳細な感想については省きますが、個人的には「当時少年法で守られていて今生きているからこそ書けた言い訳と、人との触れ合いの中で自身の犯した決して許されることはない罪に対する反省」を感じました。

ただ、「それが本心ならば」

この事件を始めとして1990年代後半は少年犯罪の多い年でありました。

当時起きた痛ましい事件を振り返っていると、とある特撮作品に辿り着きました。

実際の事件とフィクションを関連付けるのはどうかと思いましたが、当時の時代背景をみると切り離せない部分もあると感じ記事にしました。

 

 

ヤマアラシ種怪人 ゴ・ジャラジ・ダ

今回紹介するのは2000年放送の仮面ライダークウガ、第34話『戦慄』第35話『愛憎』より「ヤマアラシ種怪人 ゴ・ジャラジ・ダ(以下ジャラジ)」です。

© 2000年/石ノ森章太郎/東映/tv asahi

仮面ライダークウガに登場する怪人たちは総称して「グロンギ族」と呼ばれています。

古代の殺戮種族であり、現代に蘇って人間を対象とした殺人ゲーム「ゲゲル」を行います。

「ルールに沿っていかに標的を狩るか」が重要となるゲゲルで、各グロンギ怪人たちはそれぞれが人間を襲うために凶悪な行動をとっていますが、なかでもこのジャラジは他のグロンギたちがマシに見えるくらいの外道な行いをしています。

その内容とは、「高校の二年生男子を12日間で90人殺害する」というものでした。

ヤマアラシの特徴をもった怪人らしく武器としても使える自身の針を標的の脳に刺し込みます。この針は四日間で鈎針に膨張・変化し、脳内を内側から傷つけ脳内出血による虚血性脳梗塞を引き起こします。

しかもこの鈎針はレントゲンやMRIでも認識できず、手術によって摘出もできないという質の悪いものです。

一度撃ち込まれれば死は確実で、撃ち込まれた本人は死の恐怖に怯えながら四日間を過ごすことになります(あまりの恐怖で自ら命を絶つ男子生徒もいたほどです)。

ジャラジは殺人以外にも狂気じみた行動をとっており、死が確定したターゲットの目の前に現れ死の宣告をし絶望感を与える・死んだターゲットの葬式に現れ参列した同級生もパニックに陥れるなど本人だけでなく周囲の人間の精神もズタズタにしていました。

ジャラジ人間態

ターゲットの前では上記の人間態に化けて現れます。その際、指パッチンや爪を噛むなどの癖がみられ、精神的に未熟な子供といった印象を与えます。※演じた俳優も当時17歳でした。

狙った生徒の母親に「どうしてこんなことをするのか」と問われた際に、

「君達が苦しむ程……楽しいから」

と返答したあたりから殺人に対して躊躇なく純粋に楽しんでいる性格が伺えます(他のグロンギ怪人もそうですがジャラジの場合は別格です)。

そのあまりの外道っぷりから、歴代仮面ライダーの中でもトップクラスに優しく「例え敵であっても拳を振るうのはいい気分がしない」と言うクウガ=五代雄介が、本気で怒りを爆発させ憎悪に満ちた思いで吐血するほどジャラジの顔面を殴るほどです。

あくまでフィクションではありましたが、17歳の役者が青年役を演じ高校生を殺害するという構図が衝撃を与え、仮面ライダークウガはPTAから苦情が寄せられるほどでした。

ちなみに純粋な戦闘力としてはかなり貧弱であり、本気で殴り掛かってきたクウガには手も足も出せず一方的にやられていました。

 

ジャラジ放送回からみた時代背景

絶歌を執筆した少年Aは犯行当時の1997年は14歳、ジャラジは2000年当時の役者の実年齢が17歳でおそらくクウガ劇中での年齢設定も17~18歳です。少年Aも2000年には17歳ですから両者は同世代です。

ジャラジ放送回の頃に起きた事件を調べてみると

「豊川市主婦殺人事件」「西鉄バスジャック事件」「岡山金属バット母親殺害事件」「山口母親殺害事件」etc.

どの事件も犯人の犯行当時の年齢は17歳前後でした。

この頃は「17歳」という言葉がトレンド入りしたり、1998年以降に「キレる」という言葉が世間に浸透するなどし、1982年~1986年生まれの少年を指し「キレる17歳」と呼ばれていました。※もちろん全ての人が該当するわけではありません。

今ならば議論の的になる言葉でしょうが、それほど当時は17歳が世間に与える印象が凄まじかったということです。

この世代の方たちは、「バブル崩壊」や「就職氷河期」などの経済事情や世相の変化の影響を大きく受けた人たちのようです。

また、「高度経済成長期が終わり、豊かで合理的な時代に生まれた人たち。周囲の環境に恵まれており何かしらの刺激を求めていた世代」と分析する学者もいました。

世間の酸いも甘いも経験した世代。すべての人ではありませんが、ただの刺激では満足できなかった人たちが超えてはならない一線を越えてしまったのでしょうか?

 

 

まとめと考察:ジャラジの行動と少年犯罪者の動機

ジャラジが上記のような異常な殺人を行った動機と少年犯罪者たちの犯行動機…

それは「周りから注目されたかった」というのがあるのではないでしょうか?

ジャラジの場合は、劇中に登場するグロンギ怪人の中でも最も幼い存在。戦闘力も低いため他の怪人たちと比べて劣等感を感じていたのではないでしょうか?

人間態がよくやっていた指パッチンや爪噛みはストレスからくるものが多く、自身を落ち着かせるための行動を表しているそうです。

グロンギ族は闘争心の激しい種族であり、殺人ゲーム「ゲゲル」を通して周囲と競争し合っていたと思われます。

そんな環境にいたジャラジですから、周囲に遅れをとるわけにはいきません。

他の同族と一線を画し注目されるための手段として「ゲゲルの中で標的を身体的にも精神的にも追い詰める」という手段に出たんだと思います。

実際ジャラジの起こした事件は劇中の新聞やニュースで取り上げられ、世間の注目を浴びせることには成功しています。

一方、「キレる17歳」と呼ばれた世代の犯行動機。

刺激を求めていたと同時に、同世代が事件を起こしたということでどうしても意識せざるを得なかった部分があると思います。

それがライバル心として悪い方向に進んでしまい、自己顕示欲へと繋がり「自分もあんな風に騒がれたい・注目されたい」という思いが強くなったんだと思います。

90年以降に生まれた人たちにとって今の時代は便利で溢れています。刺激が簡単に手に入るからこそ、誰も味わったことのない未知なる刺激を求めてしまう。

刺激を求めることは良いことではあるのですが、それが間違った方向に進んでしまうのが怖いところ。

もっと他に興味の目を向けることはできなかったのでしょうか?

 

 

今回の記事を書くきっかけとなった「絶歌」。

この本をお勧めするわけではありませんが、ある意味では考えさせられる一冊でした。

ですが少年Aの犯した行為は絶対に肯定することはできません。

本の中では反省している部分も感じ取れましたが、あくまでも文章。

「それが本心ならば」という思いが読み終わったあとも拭いきれませんでした。