人には必ず「役割」というものがあります。
職場や学校、即席のチームなど多人数の場にいた場合はその人その人の個性や特色に合わせて「彼・彼女にできること」を与えられるはずです。
中には自身の役割に納得していない人もいるかと思います。
「俺ならこれ以上の仕事ができるはずなのに…」「私はこんなことしたくないんだ…」
「やりたいことと求められていることに違いがある」のは誰もが抱える悩みです。
例を出すとこんな感じです。
・本業ではなく美を追求するアーティスト
・グラビアアイドルなのに女優業に専念しようとするタレント
・ツッコミの才能があるのにボケたがる芸人
できるだけ分かりやすいように芸能界で例えてみましたが、皆さんの周りもしくは皆さん自身も理想と現実にギャップを抱えているんじゃないでしょうか?
一種の自分に対する自身の表れなので挑戦してみたいことが増えるのは素晴らしいことです。
仮面ライダーの中でもそんなキャラクターは沢山います。
ライダーという選ばれた存在でありながら自身の現実に苦悩するヒーロー。
最近は複数の仮面ライダーが存在するのが当たり前となってきているので、自分より高スペックなライダーが登場してコンプレックスを感じるキャラクターも多くいます。
しかし「仮面ライダー」という重要な役割を与えられている。
戦いの中で「自分にしかできないこと」を理解し成長するヒーローがほとんどです。
今回は超人に囲まれて自身の立場に悩みながらも周囲に支えられて役割を理解し成長したヒーローを紹介します。
どんな場面でもその人にしかできないことがあるということを教えてくれます。
平成仮面ライダーシリーズ2作目「仮面ライダーアギト」より『氷川誠』です。
氷川誠とは?人間として仮面ライダーとして…。

© 2001年 東映 テレビ朝日
仮面ライダーアギトは、仮面ライダークウガ(警察の通称:未確認生命体第4号)が未確認生命体(グロンギ)を滅ぼしてから2年後を舞台としています。
氷川誠(演:要潤)は、劇中で警視庁に配置されている未確認生命体対策班に所属している警部補です。
「仮面ライダーになろうとする男」
元々は香川県警に所属しており、アギト関連の事件の発端となった海難事故「あかつき号事件」で乗客をたった一人で全員救出したことをきっかけに警視庁にスカウトされます。※因みに要潤氏自身も香川県出身です。
その後警視庁が開発した「仮面ライダーG3」の変身者に選ばれました。
© 2001年 東映 テレビ朝日
G3は仮面ライダーではあるもののパワードスーツに近く、手作業で強化服を着込むスタイルから「変身者」というよりは「装着者」と言った方が正しいかもしれません。
© 2001年 東映 テレビ朝日
G3は本来クウガ世界の未確認生命体対策用として開発されたものであり、アギトの世界となってから出現した新たな怪人「アンノウン」に対しては実力不足な部分が多く、序盤は苦戦を強いられることがほとんどでした。
アンノウン出現→G3出動→苦戦→他ライダー(アギト・ギルス)登場→勝利 というのが流れでした。
後に戦力を大幅に強化したことによって「仮面ライダーG3–X」へと生まれ変わります。
© 東映 テレビ朝日
高性能AIを搭載したことにより当初は装着者の自我を奪ってしまうというトラブルもありましたが、いくつもの困難を乗り越えた氷川誠は成長を遂げ、単身でアンノウンを何体も撃破できるほどの武功を上げています。
その他にもG3にしか対応できない敵に対して、逆にアギトがサポートに回るという場面もありました。
唯一銃系の武器を持っているライダーだったので、遠距離攻撃はG3の専門分野でした。
氷川誠自身、警察官・仮面ライダーとして相応しく生真面目で責任感の強い性格です。
そんな反面、思い込みをしやすく性格・手先ともに不器用な面も目立ち、劇中でもいくつもの不器用エピソードを披露してくれます。
【氷川誠の代表的不器用エピソード】 ※pixiv、アットウィキより抜粋
・主人公 津上翔一と一緒にベッドを製作中にノコギリを二本折る(しかも借り物)
・草むしりで根っこを残す
・津上翔一の「武骨」という言葉にムキになり、ケーキを作ろうと生クリームを取り合う→スーツに生クリームをぶちまける
・木綿豆腐は掴めるが絹ごし豆腐は掴めない
・戦闘中、武器の解除に必要な暗証番号をド忘れ
・終盤まで津上翔一=仮面ライダーアギトだと気が付かない(周囲にヒントを出されても気が付かない)etc.
豆腐を掴む氷川さん

そして落とす
不器用エピソードはネタにされやすく、演じた要潤氏も自身のYouTubeチャンネルやSNSでよく触れています。
仮面ライダーシリーズ全体を通して言えることとして、ライダーの変身者は完璧超人もしくは変人じみたキャラクターが多いです。
そんな中でも氷川誠は性格やテンションどれをとっても「普通」と言えるようなポジションにあたります。
真面目過ぎて冗談が通じない、不器用だけど自身はそれを認めない。
物語序盤の連敗の様子から歴代最弱ライダーと揶揄されることもありました。
氷川誠はそんな自分の立場に悩むことが多かったです。
しかし彼は負けることはあってもアンノウンに対して背を向けることはなかった。
上司である小沢澄子いわく「一度も逃げたことがない」

© 2001年 東映 テレビ朝日
立場に悩んでもG3の役割を捨てることはなく、周囲から変身者の変更を提案された際は真っ先に反論します。
「仮面ライダー」に選ばれたことには誇りを持っていたようです。
本作に登場するライダーはG3の他に、アギト・ギルス・アナザーアギトがいますがどれも人間を超越した力によって変身するライダーであり、G3はやや押されてしまう様子がありました。

左からG3-X、ギルス、アギト、アナザーアギト
敵であるアンノウン側からも「ただの人間」として眼中に無しという態度を取られることも多かったです。
しかし氷川誠は逃げません。
その不屈の魂により最終決戦で幹部怪人二体を前に互角の戦いを見せる仮面ライダーG3-X。
驚愕する敵を前に放った一言はアギト屈指の名言です。
「お前はアギトではない…何故これほどの力を…何者なんだお前は!?」
「ただの…人間だ!!」
© 2001年 東映 テレビ朝日
敵に侮蔑の意味を込めて言われた一言をそのまま返す。
上記の一言には、「特別な力は無いが自分にできることはある」という自分自身の全てを受け入れた思いが込められていたと思います。
自分の強みを理解した瞬間、人はもっと強くなる
自分自身を不器用と思っていた氷川さん。
それらしいことを周囲から指摘されるとムキになってしまい、より不器用な一面に拍車がかかる氷川さん。
しかし仮面ライダーとしての彼はその不器用さもどこへやら、一人の戦士として申し分ない姿を見せてくれます。
思い返してみれば最弱ライダーと言われながらもデビュー戦から奮闘しており、敗北こそすれど身体が動く限りはアンノウンに対して果敢に挑む姿がほとんどです。
元々の警察官という職業に誇りを持っていたのでしょう。
そしてG3という戦士に選ばれたことでより一層責任感が強まった。
その責任感・誇りがアンノウンと言う未知の存在に打ちひしがれても彼は折れなかった。
それは何故か?
「仮面ライダー」という役割を自身に与えられたからです。
自分だけに与えられたたった一つの使命。
他のライダーたちは超人であり自身はそれより遥かに劣っている。
でも自分にしかできないことがあるからこそ仮面ライダーに選ばれた。だから逃げない。
「不器用」という言葉ばかりが先行して自身の立場に悩むことはあった。
でも周囲が「決して逃げない男」と評価してくれたからこそ自身の役割をこなせた。
そもそも「仮面ライダーG3」というシステム自体も、氷川誠が適任だったのでしょう。
仮面ライダーという役割を与えられた氷川誠=氷川誠にしかできない役割が仮面ライダーといったところでしょうか?
仮面ライダーG3は、氷川誠の持つ不屈の闘志と逃げない心で更に強くなりました。
現実世界でも、役割というものは「自分の長所を最大限活かすことができる」からこそ与えられるものです。
始めは「なんでこんな仕事を…」と思うことがあるかもしれませんが、やってみると意外と得意分野かもしれません。
自身にできることに気づいた瞬間人は強くなり、さらに能力を上げることができるでしょう。

© 2001年 東映 テレビ朝日
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